1985年のこっつぁんち。
 

 長野県の南牧村の野辺山に、「こっつぁんち」と言う民宿があります。
 
 友人のタチゲは、1983年頃には仕事の関係で、大阪に住んでいました。そんな時、休みを利用して原チャリで長野県をツーリングしていたのです。と、野辺山駅で妙なTシャツを着た人を見たのです。それは、「こっつぁんち」と書いてあるTシャツでした。タチゲは、その人に尋ねました。「その、こっつぁんちとは何なんですか?」・・・こうして、「こっつぁんち」という民宿の存在を知ることになるのです。
 
 1985年、タチゲから連絡がありました。話の末、信州をオートバイでツーリングをして、あの民宿にも行ってみようと言うことになりました。
 当時の記憶はだいぶ薄れておりますが、タチゲにルートを任せて、温泉巡りなどをしました。しかし、初めての土地のツーリングでもあり、渋滞もあり、こっつぁんちには、だいぶ遅い時間の到着になってしまいました。既に、他のお客さんは夕食中でした。しかし、見知らぬ私たちをとても暖かく迎えてくれました。
 この宿は、ユース形式の民宿です。少人数の場合、知らない人も相部屋になります。しかし、すぐに仲良くなります。それは、とても新鮮な感覚でした。

1985年のこっつぁんちの部屋。他の人も常連客となっています。
 
 
 こっつぁんちでは、いろいろな専門用語があります。団体ではない人は、バラバラに来た人なので、「バラ族」と呼ばれます。テレビのある部屋は、食事の後などに皆が憩います。しかし、ある時、大柄なお客さんが、ずっと寝転んでいたので、「トドの間」と呼ばれるようになりました。(Yさんのことだよねぇ。)以前は、年配の人がよく集まっていたので、「老人憩いの間」とも呼ばれていました。
 
 宿主は(ウィルスの宿主とは違いますよ。)寒い親父ギャグを連発する人です。そして、お客さんが帰る時、よく歌を歌います。「お金も飛ぶ飛ぶ、首も飛ぶ、泊まれー、泊まれー、連泊だ。」などと。
 こっつぁんは、朝食が出来ると、各部屋を歌を歌いながら回ります。私は、その後をついで「ぶんちゃっちゃちゃ、ぶんちゃっちゃ。」と口で伴奏をします。
 
 ユース形式のこともあり、また、以前は若者のお客さんがとても多く、皿洗いは皆でやっていました。そこで、仲良くなり、結婚した人も多いのですよ。また、常連客は扱いがひどく?(こりゃ、失礼。)着いた途端、配線工事をさせられた人もいますし、私は、マッサージをよくやらされます。曲がり角にある看板も、こっつぁんと、常連客と私で取り付けたよなぁ。
 
 最近、私はゴールデンウィークに訪れることが多いのですが、楽しみの一つは山菜採りです。野辺山付近の「タラの芽」は最高です。極寒の冬を乗り越えて生きてきたので、他の場所でとれる「タラの芽」と一線を画す美味です。そのほかにも、「コゴミ」や「コシアブラ」などをとります。ただ、ここ数年、春の訪れが遅いので、収穫が全くないことも多くなりました。これも、異常気象の一つでしょうか。
 
 野辺山は、1.300mを超える高原です。従って、夏でも涼しいです。しかし、ゴールデンウィークの時ですら、突然の雪になることもあります。ある年は5月の連休の時に、ものすごい降り方になったこともあります。更に、ある年は、訪れる1日だったか、2日だったか前に数十センチも雪が積もったことがあります。
 
 近くに温泉が多いので、常連客や、全く初めての人を連れて一緒に温泉に行くことがあります。